[スペックマニア] 39回

日本のスポーツ車 1960〜1990



第15回  ブルーバード1600SSS
(510型)1967年


最高速=165km/h 0→400m=17.7秒
(カタログ値)



SSSの名が似合うのはこの510型だけだ。
 SSSといえばブルーバード。
一時期、バイオレットあたりにもSSSグレードが設定されたりしたこともあるが、SSSはやはりブルーバードに一番シックリくる。
ブルーバード以外のSSSは願い下げとしたい。
同様にブルーバードGTなんてのもあったが、これも似合わない。ブルーバードはやはりSSSで決まりである。
 SSSは「スーパー・スポーツ・セダン」の意味である。
登場したのは2代目ブルーバードの410系のときで、1964年(昭和39年)3月にSUツインの1200SS(スポーツ・セダン)を追加、さらに1965年(昭和40年)5月にこれもSUツインの1600SSSをデピューさせた。
 410系ブルはオーソドックスすぎたスタイリングも不評で、今ひとつパッとしないシリーズであったが、おとなしいセダンのボディにSUツインのエンジンをのせたこのSSSは「ブルーバードのイメージを変えた」ともいわれた。
 1967年(昭和42年)8月、ブルーバードはフルチェンジで3代目の510系の登場を迎えた。
スーパーソニックラインと呼ぶ美しいボディラインの510系は歴代ブルーパートの中でもとくに”名車”の呼び声の高いシリーズである。
エンジンは1300と1600だが、いずれも前モデルのOHVからOHCに変わった。
SSSももちろん健在で、エンジンは前モデルの4気筒、OHV、1595cc、SUツインキャブで90PSのR型から、4気筒、OHC、1595cc、SUツインで100SのL16型に換装。最高遠も410系SSSの160km/hから165km/hにアップとなった。
「視界が悪くなる」といって不評だった、三角窓がなくなったのもこの510系ブルからである。
 サスペンションはもちろんブルーバード伝統(510型以降のブルーバード)の4輪独立懸架で、フロントがストラット、リアはセミトレーリング型式で、ブレーキはフロントにサーボアシスト付のディスクが採用された。
内外装も精悍なブラックマスクのグリルに、3本スポークのウッドステアリング、タコメーターに砲弾型ミラーなどのスポーティ装備となっていた。
 1968年(昭和43年)10月にはシングルキャブで92PSの1600エンジン搭載車を加えて、1600をブルーバードダイナミックシリーズと命名し、これを中心に据えてゆく。
11月にはセダンのボディをベースにスポーティな2ドアとした1600クーべと1600SSSクーべが新しく設定された。
SSSはセダンとクーべを揃えたことになる。
 さらに1970年(昭和45年)9月には同一ボディに4気筒、OH01770cc、SUツインで115PSのL18型ツインキャブのエンジンを搭載した1800SSS、1800SSSクーペを追加した。
最高速175km/hという文字どおりのスーパースポーツであった。
 ただしSSSの身上は「スポーティさにプラス軽快さ」である。ライバルのコロナとの激しいせり合いも背景にはあるにせよ、エスカレートする排気量アップが逆にSSSの魅力を薄れさせる恐れもないではなかった。
1800となったSSSには確かに強烈なトルクが感じられ、”速さ”を見せつけた。しかし車はトータルバランスが大切である。
その意味では1600が好バランスのとれたモデルだった。
 510系のブルーバード1600SSSは国際ラリーにも積極的に参加。69年のサファリ・ラリーではクラス優勝とメーカーチーム優勝をかち取り、70年のサファリではついに総合優勝と2位、4位という勝利をおさめた。
スーパー・スポーツ・セダンの名に恥じない性能と実力をいかんなく発揮した快挙ではあった。
 410系ブルで生まれたSSSだが、ブルーバードSSSの人気を定着させたのほやはりこの510系SSSであった。
その後のSSSが軽快さや動力性能面で魅力を欠いたこともあって、この510SSSの印象は鮮烈である。



510のキャッチは4輪独立懸架。それもフロント/ストラット、リア/セミトレの組み合わせ。
これはBMWのサスと同じだったが、この足廻りが軽快な走りを実現したのだった。名づけて「雲の上を行く乗り心地」。当時の道路状況からみて、まさに”快適”だったのである。
モーターマガジン1968年8月の広告。4輪独立懸架の乗り心地は「雲の上を走る」ようなものという印象を打ち出している。


諸元  ブルーバード1600SSS
バリエーション
70年9月から発売された510SSSクーペ。スポーツモデル=クーペはこの頃から定着してきたのかもしれない。
運転席まわりは4ドアセダンと同じ。ビニールレザーのシートが当時を物語る。夏の暑い日にはむれたものだった。
エンジンは名機L16型。ノーマルのL16をSUツインでパワーアップし、最高出力は100ps/6000rpm。
 エンジン 
   種類/型式
   ボアxストローク
   総排気量
   圧縮比
   最高出力
   最大トルク
   燃料供給装置
   燃料タンク容量
 トランスミッション
   型式
   変速比 1/2/3
         4/5/R
   最終減速比
 シャシ
   ステアリング
   サスペンション    前
               後
   ブレーキ       前
               後
   タイヤ
 ディメンション&ウェイト
   全長x全幅x全高
   ホイールベース
   トレッド     前/後
   最低地上高
   室内長x幅x高
   車両重量
   乗車定員
 車両価格(当時)
     75.5万円

直4・SOHC/L16
83.0X73.7mm
]595cc
9.5
100ps/6000rpm
]8.5kgm/4000rpm
SUキャブレターx2
46リットル

4MT
3.657/2.177/1.419
1.000/−−−/3.638
3.900

RB
ストラット/コイル
セミトレ/コイル
ディスク
LTドラム
5.60−13 4PR

4120x1560x1400mm
2420mm
1280/1280mm
190mm
1740x1270x1130mm
915kg
5名

エピソード
プル510のCMによく登場してくるのが「SUPERSONlCLINE」の文字と超音速ロケットが風を切るイラスト。
ブルーバード510のウエッジシェイプ(WedgeShape=クサビ型)デザインを風を切り裂くロケットのイメージにダプらせ、ブルーパードの速さを印象づけようとしたものだった。当時は超音速旅客機の構想が打ち上けられ、時代はスピードを要求していた。
CMでもブルーバードは先端を走っていたのだった。
  

モータースポーツ
日産はいち早くラリーに目を付け、サファリ・ラリーにブルーバード510型を投入した。69年はクラス優勝と総合3位を獲得。翌70年はクラス優勝に加え総合優勝まで手にした。以来、3年連続でこのタイトルを死守。その活躍に魅了され購入を決意したユーザーも少なくない。「栄光の5000キロ」という映画も上決され、国内外問わずのベストセラーカーに。「世界のブルーバード」たる地位を築き上げた。

当時のインプレッション
”ゴーイチマル”の愛称で人気を集めたブルーバードの一番の魅力は、そのサスペンションの良さだ。前ストラット/後セミトレの4輪独立懸架を全車に採用し、優れたロードホールディングを見せてくれた。
SSSにはSUツインキャブの100psエンジンを搭載し、4速マニュアルを駆使してワインディングを飛ばすのは痛快の一言。
ポルシェタイプのシンクロのミッションもスパッスパッと決まり、まさにスーパースポーツセダンの走りだった。

カタログ
帆船のマストを背景にしたSSSのカタログ。4輪独立による軽快な乗り心地をイメージしている。
キャッチは”驚異的な高性能セダン”。
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