日本のスポーツ車 1960〜1990



第42回  トヨタ カローラクーペ1600レビン
(TE27型)1972年3月


最高速度=190km/h 0→400m=16.3秒
(カタログ値)



”稲妻”パワーでカッ飛ぶハードマシン。

 つい最近まで若者を魅了するライトウェイト・スポーツの代表選手が、カローラ/スプリンターをベースにしたレビン/トレノだった。
レビン/トレノは、2代目の20型カローラ/スプリンターのときに誕生した。
ネーミングはカローラ・レビン(TE27MQ)とスプリンター・トレノ(TE27MB)で、マニアからは”27レビン(トレノ)”と呼ばれている。
 その母体となったのは、カローラのクーペモデルである1400SRだ。
丸みを帯びたセミファストバック・スタイルを採り、コンパクトなボディながら存在感がみなぎっている。
しかもレビン/トレノはFRP製のオーバーフェンダーと175/70HR13ラジアルタイヤで武装した。フロントマスクもスパルタンムード満点だ。
ちなみにレビンとトレノではフロントマスクやリアコンビネーションランプなどのテザインが異なり、トレノのほうが全長で15mm長くなっている。
 レビン/トレノでもっとも目を惹くのはパワーユニットだ。
その心臓にはセリカ1600GTやカリーナ1600GTに積まれている2TG型4気筒DOHCが選ばれた。
1400SRなどに搭載されているT型4気筒OHVをベースに、ボアを5mm拡大し、これにアルミ合金製のDOHCへッドを載せたものである。
精度の高い低圧金型鋳造法で整形されたクロスフローの半球形燃焼室をもち、全域にわたってシャープに吹き上がる高感度なエンジンだ。
 ポア85.0mm、ストローク70.0mmで、排気量は1588ccになる。これにソレックス40PHHキャブを2基装着した。
圧縮比は9.8のハイコンプレッションだ。性能的にもトップレベルにあり、最高出カ115PS/6400rpm、最大トルク14.5kgm/5200rpmを発生する。
 レビン./トレノの特徴のひとつは、軽量かつコンパクトなポディだ。カローラ・レビンは855kg、スプリンター・トレノは865kgとセリカと比べて100kg以上も軽い。パワーウエイト・レシオは7.43kg/PSになるが、これは当時としては画期的な数値である。
ミッションは1400SRのものと同じだが、DOHCパワーを効率よく引き出すために、ファイナルギアを4.300に高めた。当然、オプションでリミテッド・スリップ・テフも用意されている。最高連は190km/h、ゼロヨン加速も16.3秒の駿足を誇った。
 また、レビン/トレノには圧縮比を8.8に落とし、レギュラーガソリンの使用を可能にしたモデルも設定されている。
こちらは110PS/6000rpmと、5PS抵いスペックだ。
サスペンションは、他のカローラと基本的に同じである。フロントはマクファーソンストラット/コイル、リアはリーフスプリングによるリジッドアクスルを採用した。しかしながらダンパーやスプリングは各段に引き締められ、ハードなセッティングとなっている。
 インテリアもスパルタンムード一色のレイアウトだ。タコメーターとスピードメーターを中心にした凄みのある6連メーターや本革巻きのスポーツステアリング、バケットタイプのフロントシート、フットレストなどを標準装備する。
快適性よりも走りを満足させるためのインテリアといえるだろう。
 レビン・・トレノは72年3月にベールを脱いだ。そして発売から5カ月にしてフェイスリフトを受け、一段と逞しく生まれかわる。
フロントグリルは立体的な造形となり、リアコンビネーションランプも、より端正で視認性のよいデザインに改められた。
 レビン.トレノがデビューしたときの衝撃は、筆舌に尽くしがたい。高性能モデルは数多く存在したが、これほど安価に、持てるポテンシャルを発揮してくれるクルマはなかった。セリカと比べて荒さが目立ったが、走り屋にとつては逆に大きく魅力となっている。
このジャジャ馬を乗りこなすことを至上の喜びとし、レースやラリーでも豪快な走りを見せてくれた。

6連メーターに本章巻きステアリング、そしてエアホール入りのバケットタイプシート。
フットレストの効果も大きかった。
●カタログ
スポーツ性をアピールするためだろうか、あえてモノトーンで作られたレビンの力タログ。
これは表紙だけでなく、中のページもこの調子で、イエローのストライプがアクセントになっている。
    


主要諸元 トヨタ カローラクーペ1600レビン
 エンジン 
   種類/型式
   ボアxストローク
   総排気量
   圧縮比
   最高出力
   最大トルク
   燃料供給装置
   燃料タンク容量
 トランスミッション
   型式
   変速比 1/2/3
         4/5/R
   最終減速比
 シャシ
   ステアリング
   サスペンション    前
               後
   ブレーキ       前
               後
   タイヤ
 ディメンション&ウェイト
   全長x全幅x全高
   ホイールベース
   トレッド     前/後
   最低地上高
   室内長x幅x高
   車両重量
   乗車定員
 車両価格(当時)
        81.3万円

直4・DOHC/2T-G
85.0x70.0mm
1588cc
9.8
]15PS/8400rpm
14.5kgm/5400rpm
ソレックスツインキャプ
43リットル(プレミアム)

5MT
3.587/2.022/1.384
1.000/0.861/3.484
4.300

RB
ストラット/コイル
リジット/リーフ
ディスク
LTドラム
175/70HR13

3945x1595x1335mm
2335mm
1270/1295mm
150mm
1655x1290x1105mm
855kg
5名

●バリエーション
1972年8月 後期型27レビン
デビュー当時のレビンはタテ格子のグリルに、”C”のマークが付いただけの簡潔なテザインだったが、5カ月後のマイチェンではブラック格子の精悍なマスクが与えられ、フロントコーナーの形状も変更を受けて大幅なイメージチェンジが図られている。
1972年3月 初期型トレノ
デビュー時のトレノは囲まれたグリルに”S”マークの入ったフロントデザインだった。


1973年4月 カローラレビンJ
オーバーフェンダーなど外観はレビンなのだが、心臓部には2T-B型1600・0HVにツインキャブの105PS/40kgmエンンンを積んだレビンJ(ジュニア)が加えられた。
1972年8月 スプリンタートレノ
マイナーチェンジてフロントグリル/ボンネットを一新したトレノ。エンジンは2T-G115PSのままで、レギュラー仕様の110PS型もあった。

●エピソード
81万3千円の低価格で爆発的人気
レビン・トレノの開発にはセりカ、カリーナの1600DOHC搭載車を増設することにより、リスクを軽減しようとの狙いもあった。果たして1972年3月に追加されたTE27型は81万万3000円の低価格が人気を呼び、爆発的な売れ行きとなる。が、トヨタにとってはカローラ・セダンのシャシにセリ力のエンジンと既存のパーツの組み合わせ、十分に採算が取れたのである。ちなみに2T-G型DOHCは4A−Gに変わるまで、13年間で30万基近くが製造された。


レビンとトレノの違いは・・・
レビンがセダンの雰囲気を残しながらブラックアウトされたラジエターグリルの精桿さを強調したのに対し、トレノはヘッドライトを後退させ、斬新なマスクとした。テールランプの配置もレビンか横基調なのに対し、トレノは縦基調で差別化を図った。TE27型ではレビンよりトレノが全長で15mm長く、車重も10kgほど重かった。これはカローラに対し、スプリンターが車格を上に設定されていたことに起因する。

911と同等の馬力荷重
レビンは655kgの軽量ポデイに115PSのツインカム工ンジン搭載で鋭いダッシュ力を見せた。
パワーウェイトレシオは7.43kg/PSで、この数値は当時、スポーツカーの代名詞ともなっていたポルシェ911の8.08k/PSを上回っていた。ポルシェの130PS1080kgに対し、レビンは115PSながら軽量さが効いたのだ。
しかしその後ポルシェは排気量を2400から2700にアップして175PSとなり(6.14kg/PS)、レビンを越えてしまう。

●当時のインプレッション

70年代の初頭に登場したいわゆる27型と呼ばれたカローラ/スプリンターは、今もって最もバランスのとれた優れたデザインと性能を持ったモデルだったのではないだろうか。
カローラに初めて登場した高性能モデルで、セリカと同じ2T-Gユニットを搭載した、強力なものだった。
このため、その高性能は当時としては驚異的で、軽量コンパクトボディなことも手伝って、極めて鋭い加速を示した。
ただし、乗り心地とノイズレベルは、決してほめられたものではない。

●モータースポーツ
 72年の国内レースでは何回かクラス優勝を果たし.73年からは国内外 ラリーで活躍した。
 主な優勝はナイジェリアのアーグング・サファリラリーヤアメり力のP0R ラリーなど。
     
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