日本のスポーツ車 1960〜1990



第45回  マツダ サバンナGT(RX-3)
(S124A型)1972年09月


最高速度=190km/h 0-400m=15.6秒
(カタログ値)



レースで爆発したロータリーパワー。

 サバンナは、ファミリア・ロータリークーペの後継モデルとして開発された、ロータリー専用のパーソナルカーである。
ロングノーズ&ショートデッキの躍動感あふれるスタイリングを採用し、フェンダーもレーシングマシンを思わせるワイドなものだ。
ボディバリエーションは4ドアのセダンと2ドアのクーペが用意されていた。もちろん、アフリカの大草原を奔放に走りまわる猛獣のイメージが強いのは、2ドアクーペのほうである。
 フロントマスクのノーズ中央を張り出させ、その左右にデュアルヘッドライトを組み込んだ。
このノーズピースはFRP製で時代を先取りしたものだった。
サイドビューは弓を引き絞った力強いアーチェリーカープで構成され、エアアウトレッドも爬虫類の背ビレを思わせる大胆な造形になっている。
また、リアエンドには、ロータリーパワーを誇示する丸形のリアコンビネーションランプを並べた。
 インテリアも、ファミリア・ロータリークーペを昇華させた伝統のT型ダッシュボードを採用する。
大径のタコメーターとスピードメーターを中心に、センターコンソールにコンビネーションメーターや時計を組み込んだ。
ステアリングも、ホーン部分にロータリーマークを刻み込んだスポーティな3木スポークステアリングとなっている。
 エンジンは、ファミリア・ロータリークーペから譲り受けた10A型2ローター・ロータリーを積む。
アイドルリミッター付き2ステージ4バレルキャブやフュエル・リサキユレーダーなどを採用して排ガスと騒音を低限しているが、パワーは逆に高められた。
10A型は単室容積491ccx2ローターで、最高出力105PS/7000rpm、最大トルク13.7kgm/3500rpmの性能だ。
4連ミッションを介しての最高連は180km/h、ゼロヨン加速も2リッタースポーティカーに肉薄する16.1秒の駿足を誇った。
 サスペンションは.オーソドックスなストラット/コイル、リジッド/リーフだが、リアをオイルダンパーの取り付け角をずらしたバイアス・マウント方式とし、乗り心地と操縦安定性を向上させている。
 そして、サバンナの真打ちとして72年9月に投入されたのが、ホッテストバージョンのサバンナGTだ。
これはマツダRX‐3の名でアメリカに送り込まれていたモデルを、国内向けにモディファイしたものである。
すでに5月に開催された日本グランプリで先行デビューを果たし、常勝スカイラインを退けてスーパーツーリング部門のウイナーになった。
最大のセールスポイントは、その強力な心臓部だ。10A型に代えて、カペラGS用の12A型2ローター・ロータリーをボンネットに収めている。
573ccx2ローターの12A型は120PS/6500rpm、16.0kgm/3500rpmのハイパワーを誇り、パワーウェイト・レシオも7.38kg/PSを達成した。
 この強力なエンジンにカペラGS-Uと同じ5連ミッションを組み合わせ、最高速190km/h、セロヨン加速15.6秒を可能にしている。
ブラックアウトされた精悍なインテリアには丸型の5連メーターと新デザインのセンターコンソールが採用され、サスペンションも大幅iに強化された。
 テビューから1年後の73年6月にはフロントグリルをリファインし.リアコンビネーションランプも丸型から六角形に変更されている。
しかも74年11月には、排ガス対策に追われてライバルが軒並みパワーダウンするなか.サバンナのみはパワーアップを図った。
最高出力は125PS/7000rpmに高められ、最大トルクも16.2kgm/4000rpmに向上している。
 サーキットの常勝マシンの座に君臨したサバンナGTは、公道でも群を抜く速さを見せつけている。
ロータリーパワーを支配下に置いた初めてのモデルが、RX‐3の名で親しまれたサバンナGTだ。



丸型6灯の初期型丁テールライトとZ78−13のバイアスタイヤ。これが73年6月には六角型のテールライトに変わり、タイヤもZ70−13になった。 ブラックに塗られたダッシュボードに5連のメ‐ターが並ぶ。3本スポークのステアリングもGT感覚を盛りあげる。 サイトポート式の2A型ロータリーは120PS16.0kgmの性能で、レブリミットの7000rpmまでなんのストレスもなく電気モーターのように回った。


主要諸元 マツダ サバンナGT
●バリエーション
1972年9月 初期型サバンナGT
フロントグリルが四角で囲まれたスタイルのデビューまもないモデル。ページ最上段の大きな写真のモデルは73年6月の大きなマイナーチェンジでリスタイルされたもの。
   

1971年9月 サバンナクーペGSU
テビュー時のサバンナにはセダンとクーペの計7機種があり、ともに10A型105PSのロータリーエンジンを搭載していた。最高速はクーペで180km/h、0-400mは16.4秒。価格ははクーペGSで75.0万円
   
 エンジン 
   種類/型式
   ボアxストローク
   総排気量
   圧縮比
   最高出力
   最大トルク
   燃料供給装置
   燃料タンク容量
 トランスミッション
   型式
   変速比 1/2/3
         4/5/R
   最終減速比
 シャシ
   ステアリング
   サスペンション    前
               後
   ブレーキ       前
               後
   タイヤ
 ディメンション&ウェイト
   全長x全幅x全高
   ホイールベース
   トレッド     前/後
   最低地上高
   室内長x幅x高
   車両重量
   乗車定員
 車両価格(当時)
        79.5万円

直2・RE/12A
−−−
573ccx2
9.4
120PS/6500rpm
16.0kgm/3500rpm
4バレルキャプ
60リットル

5MT
3.683/2.263/1.397
1.000/0.862/3.692
3.706

RB
ストラット/コイル
リジッド/リーフ
ディスク
LTドラム
Z78−13−4PR

4065x1595x1335mm
2310mm
1300/1290mm
165mm
1700x1290x1115mm
885kg
5名

●カタログ

これはサバンナGTのメカニカル解説書の表紙だ。富士スピードウェイと鈴鹿のレーシングコースをバックに、片山選手とRX-3のイラストで構成したもので、打倒ス力G-Rの秘策がすでに練られていたことは明らかだ。
  

●スピードトライアル

モーターマガジン誌1975年9月号で、レーシングRX‐3のテストレポー トが載っている。ベリフェラルポートのREを積む釜塚RX‐3は推定250PSのパワーをフルに発揮して237.23km/hの最高速をマークし、0→200m=9.11秒、0→400m=13.4秒のダッシュカを記録している。
  

●エピソード
輸出モデル名はRX-3

 国内向けにサバンナGTとネーミングされたモデルの輸出用は「マツダRX-3」と命名されたが、このRX‐3はシリーズ全体のモデル名を表す。今日のサバンナは「RX-7」のモデル名が有名になってしまったが、正式車名は同様に「サバンナ」なのだ。輸出用は国内用より6カ月早い72年3月から米国で発売が開始された。

73年6月の大マイナーチェンジ
サバンナは73年6月、大幅なマイナーチェンジを敢行した。
フロント、リアはともに洗練されたデザインになり、特にリアは斬新な六角形のテールランプを採用した。
クーペは内装を黒に統一するなど充実度を高め、安全対策として全車にブレーキサーボ、助手席3点式ベルト、可倒式ミラー、ステアリングロック機構を完備した。
GTは従来の78タイヤに代えて70の偏平タイヤを装着、ワイドトレッドとあいまって走行安定性が高まった。

●モータースポーツ
 サバンナGTは「サバンナRX‐3」の名で71年12月の「富士ツーリスト トロフィー」に参戦。この日、50連勝目のかかったGT‐R勢が相次いで リタイアし、加茂進/増田建基組のRX-3がデビューウインを飾った。
 明けて72年3月の「富士GCシリーズ第1戦」てはG丁-Rが勝利を納 め、念願の50勝目をマークしたが、5月の日本グランプリでは片山義美 のRX-3が優勝を奪い、以来、GT‐Rに代わってサーキットを席巻した。
  

●当時のインプレッション
ロータリーパワーと、よりハードなサスペンションを持って登場したサバンナGT。そのスポーティさを強調した丸型メーターのブラック・インテリアとともに、若者に人気のモデルだったが、あまりにハードな設定のサスペンションは一般向きとは言いがたく、また簡単にフェードしてしまうブレーキは、強力な工ンジンパワーに見合うものではなかった。ロータリーのネックとなった燃費の悪さも、やはり相当なものだった。
inserted by FC2 system