日本のスポーツ車 1960〜1990



第46回  ニッサン スカイラインHT2000GT-R
(KPGC110型)1973年01月


最高速度=190km/h 0-400m=15.6秒
(カタログ値)



最強のケンメリRは排ガス規制でわずか197台の短命。

 スカイライン2000GT-Rは、サーキットで勇名を馳せた2000GT−Bの後継モデルとして69年2月に発表された。
発売されるやサーキットに姿を現わし、GT−B以上の常勝マシンになっている。70年秋にはホイールベースを詰めたHT2000GT-Rにバトンタッチされ、一段ととポテンシャルをアップした。
 72年9月、スカイラインはフルモデルチェンジを行ない、GTとしては3代目に当たるGC110型が登場する。
このモデルは、”ケンとメリーのスカイライン”と呼ばれたが、当初はL型エンジン搭載車のみだった。スカイラインのイメージリーダーカーであるGT-Rが新しい衣を被って復活するのは、2000GTの発売から4カ月後のことだ。
 型式名KPGC110を与えられた2代目GT-Rは、2ドアHTをベースに作られた。
全体のシルエットは2000GTと変わっていないが、ブラックアウトされた精悍なフロントマスクを採用し、4輪にビス止めのオーバーフェンダーを配している。また、リアエンドには安定性を高めるためにスポイラーが装備された。
当然、ボディサイドに付けられるのは栄光の赤バッジだ。
 インテリアも2000GTをベースに、GT-Rならではのスパイスを加えたものである。
ダッシュボードはアルミパネルに変更され、そのなかにフルスケール240km/h表示のスピードメーターと、1万回転まで刻んだタコメーターを組み込んだ。シートもサポート性のよい本格的なフルバケットシートを標準装備している。
 エンジンは初代GT-R同様に、サーキットで鍛え抜かれたS2型直列6気筒DOHC24バルブを積む。これを12度傾斜させてボンネットに収めているが、エキゾーストマニホールドやエアインテークの形状などがわずかに変更されている。
ボア82.0mm、ストローク62.8mmのオーバースクエアで、排気量は1989ccだ。アルミ合金製のへッドや多球形燃焼室、サイドボルト式のシリンダーブロック、フルトランジスタ・イグナイダー、チェーンによるカムシャフト駆動など、基本的なメカニズムに変わりはない。
 2種類の仕様があり、プレミアムガソリン仕様は9.5の圧縮比で最高出力160PS/7000rpm、最大トルク18.0kgm/5600rpmを発生。
圧縮比を9.0に落としたレギュラーガソリン仕様は155PS/7000rpm、12.6kgm/5600rpmの性能だ。
キャブレーションは、ソレックス40PHHキャブ3連装である。
 ミッションはブノレーバードSSS以来、日産の伝統となっているポルシェタイプフルシンクロの5連MTだ。
2代目GT−Rではストリートユースを考慮してギア比が高められ、扱いやすさを増している。
 サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット/コイル、リアがセミトレーリングアーム/コイルを踏襲した。リアにスタビライザーを追加し、リミテッドスリップテフも組み込まれている。ちなみにホイールベースは40mm延長され、26mmとなった。
ブレーキは、フロント/リアともディスクだ。
 初代GT−Rはサーキットを席捲するために開発された。だが、2代目GT-Rは最速のストリートバージョンたることをめざして設計されている。
そのため車重は1145kgと重くなっているし、ガソリンタンク容量も2000GTと同じ55リットルにとどめられた。
ギア比もしかりで、ハイギアード化されている。
 マニアの注目を集めた2代目GT−Rは、劇的な幕切れで、その短い生涯を終えた。排ガス対策を理由に、発売から4カ月にして生産が打ち切られたのである。
その間に生産されたのは、市販車195台、試作車2台の197台のみだ。この生産台数はフェラーリやポルシェといったスポーツカーよりはるかに少ない。まさに幻のGT-Rであり、サーキットに足を踏み入れることなく去っていった、悲劇のスパルタンGTと言えるだろう。



160PSを発生するS20型直6D○HC4バルブエンジン。ソレックスの3キャブを装着していたが、排ガス規制をクリアできずに、このケンメリGT‐Rを最後に姿を消した。 7連メーターのスポーツ力ー感覚。レッドゾーンは7500rpmから始まり、スピードメーターは240km/hまで刻まれていた。 Rの名に相応しい本格的バケットシートはリクライニングなしだったがホールド性は申し分なし。ブラックに統一されたインテリアがムードを高める。


主要諸元 ニッサン スカイラインHT2000GT-R
●スタイル
レーシングタイヤの装着が可能なように、ノーマルのフェンダーを大きくえぐり出し、さらに大型のオーバーフェンダーを付けて精桿さを増している。
4輪ディスクブレーキ、リアに組み込まれたノンスリップデフ、そしてリアスポイラを標準装備するGT-R。タイヤは175HR14ラジアルだ。
 エンジン 
   種類/型式
   ボアxストローク
   総排気量
   圧縮比
   最高出力
   最大トルク
   燃料供給装置
   燃料タンク容量
 トランスミッション
   型式
   変速比 1/2/3
         4/5/R
   最終減速比
 シャシ
   ステアリング
   サスペンション    前
               後
   ブレーキ       前
               後
   タイヤ
 ディメンション&ウェイト
   全長x全幅x全高
   ホイールベース
   トレッド     前/後
   最低地上高
   室内長x幅x高
   車両重量
   乗車定員
 車両価格(当時)
       162.0万円

直6・DOHC4パルブ/S20
82.0x62.8mm
]989cc
9.5
l160ps/7000rpm
18.0kgm/5600rpm
ソレックスキャブx3
55リットル(ハイオク)

5MT
2.926/1.902/1.308
1.000/0.864/3.382
4.444

RB
ストラット/コイル+スタビ
セミトレ/コイル+スタビ
ティスク
ディスク
175HR14

4462×1695×1380mm
2610mm
1395/1375mm
165mm
1790x1340x1125mm
]145kg
5名
●エピソード
 レギュラー仕様は5psダウン

 公害対策車としてハコスカGT-Rも1972年式からレギュラーガソリン 仕様車が加えられていたが、ケンメりGT-Rもこれは同じ。160PS、 最高速200km/hを発揮したS20型だが、レギュラーガソリン仕様 では圧縮比を9.5から9.0に下げられ、155PS/7000rpm、 17.6kgm/5600rpm、最高速は195km/hとわずかにダウン した。

 レース出場なしで197台で生産打ち切り
 GT-Rは4輪ディスクブレーキが装備されたが、車重は1100kgから 1145kgへ、ホイールベースも旧型より40mm長い2610mmとなり、 運動性は低下した。燃料タンクの容量も旧型の100リットルに対し、 55リットルと小型化し、レースを前提に開発がなされなかったことを 物語っている。 レースではサバンナなどのロータリー勢が無敵を誇っており、ケンメリ GT-Rが彼等に戦いを挑むことは一度もなかった。 排ガス規制によりわずか197台で生産を終えた。

●カタログ
「あの豪放な気性を内に秘め、デザインを昇華。Rが甦った、不死鳥のように」と謳われた110GT‐R。
カタログの扉にはS20型エンジンのソレックス3連キャブのアップ写真が使われていた。

●モータースポーツ

先代のKPGC10型はわずか2年余で50勝をあげてレース界で、圧倒的な強さを見せてくれたが、2代目GT-Rはレースに出場せず、モーターショーでそのレーシングパージョンが姿を見せただけだった。
もし出場すれば高橋国光選手がハンドルを握ったであろうが、重量がかなり重いためレース出場はかなわなかっだという。
   
●当時のインプレッション
2代目こ当たるケンメリGT-Rは、豪放なグランドツアラーだ。
48年排ガス対策を施しているため、S20型エンジンの低速レスポンスは今一歩だが、4000回転以上では胸のすく加速フィーリングを満喫できる。ギア比も八イギアード化され扱いやすさを増した。初代モデルよリはるかに洗練されているのがサスベンショシン。コーナリング性能が向上し、ステアリング特性も弱アンダーのコントロールしやすいものである。
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