日本のスポーツ車 1960〜1990



第59回  トヨタ セリカLB2000GT
(RA40型)1977年08月


0-100km/h=13.10秒  0-400m=17.82秒(テスト値)



新しいカタチ”エアロダイナミクス”への挑戦。

 日本の市場でスペシャリティカーという新しい分野を築いたモデルといえば、それはこのセリカにほかならない。
ここで紹介するモデルは、77年8月に発表されたセリカのセカンドジェネレーション。ボディサイズは従来型と比較して一回り大きなものとされ、クーぺとLB(リフトバック)という2種類のボディ形式が設定されていた。
 2000GTに搭載されたエンジンは、2000cc直列4気筒DOHC。ソレックス製ツインキャブレターとの組み合わせで、130PS/5800rpmの最高出力を発揮している。
とかくDOHCエンジンというと、そのシャープで鋭い吹け上がりだけが話題になる傾向にあるようだが、このユニットの場合には、どちらかといえば低回転域から十分に発揮される強大なトルク感が印象的だった。
 サスペンションはフロント側がマクファーソンストラット+コイルスプリング、リア側はラテラルロッド付きの4リンク式と、基本的には初代セリカと共通しているものの、トッブモデルの2000GTにはリアスタビライザーが標準装備され、その結果ステアリング性能はよりニュートラルなものに変化した。
 実際にセリカ2000GTの卓越したコントロール性は、多くのユーザーから絶対的な支持を得るに至っている。
RWDという駆動方式との組み合わせで、まさにステアリングとアクセルワークで自在なコーナリングを楽しめるといった表現が最適だ。
 セリカは確かにスベシャリティカーとして誕生したモデルだが、その走りは純粋なスポーツモデルにも匹敵する素晴らしいものであった。
もちろんスヘシャリティカーとして必要な不可欠なラグジェアリー性も十分に確程されている。
キャビンはボディサイズの拡大に伴ってより開放的なものとなり、インストゥルメントパネルも、落ち着きのあるデザインながら、その中に秘められたスポーツ性を感じるものが与えられている。
 GTシリーズは、もちろんセリカの最高級グレード。
当然のことながら装備レベルも、ライバル車種と比較しても一切遜色を感じさせないものだ。
スポーツ性を感じさせてくれる各種のメーター類はもちろんのこと、電動リモコンミラーやパワーウインドー、そしてAM/FMラジオなど、当時の先端をいく装備がほぼフルの状態で備えられていたほか、4輪ディスクブレーキなど走りの性能に直結する機構も標準で与えられている。
 この2000GTの下に位置するモデルとして設定された1600GTは、よりシャープなスポーツ性能を感じさせてくれた一台だ。
搭載されたエンジンは、もちろん40年代終盤からのトヨタを象徴するDOHCユニットの2TG型で、高回転城でその本領を発揮するDOHCならではのフィーリングは、現在でもなお多くのマニアの心を捕らえて離さない。
 2000GTがそのトルク感覚を強く主張し、高速クルーザーとしての魅力を最も強く感じるモデルならば、この1600GTは紛れもなくワインディングでの動きに最も大きな魅力を感じるモデルである。
コーナリング特性は、2000GTよりもさらにシャープでニュートラルなものとなり、DOHCエンジンの特性を十分に認識していなければ、1600GTの本来の走りを堪能することはできなかったのだ。
 搭載エンジンやサスペンションなど、機構的な部分は完全に共通ではあるものの、より硬派な走りに撤したというユーザーのために、トヨタはGTVとよばれるスポーツモデルをGTに並行して設定していた。
こちらは数々のモータースポーツイベントにも投入され、そこでの活躍がさらにセリカの人気を煽ったことは言うまてもないことである。
講にても簡単に乗っこなせるスポーツモデルとして企画された初代セリカ。このセカンドジェネレーションも、その基本的なコンセプトにおいては一切変わるところはない。セリカの人気を決定的なものとした歴史的な一台だ。



ソレックス・ツインの18R-GUは軽くあおるだけで7000rpmのレプリミットまで元気な音を立てて吹け上がる。 直線を基調にしたダッシュボードはアルミ張りのパネルに計器を並べ、スポーティーな感覚を出している。 ブラックアウトされたカムカパーは結晶塗装。排気対策仕様のソレックスツインで130PS/5800rpmを発生する。



主要諸元 トヨタ セリカLB2000GT (出力はグロス)
●カタログ

 
79年8月(左)と80年8月(右)のカタログ比較。LB2000/1600GTのリアサス変更だったのでカタログも細部手直しのみだった。おもしろいのはリアサスの透視図に説明がペタッとノッているところ、普通は左のようにキレイにやるんだけど。
  エンジン 
    種類/型式
    ボアxストローク
    総排気量
    圧縮比
    最高出力
    最大トルク
    燃料供給装置
    燃料タンク容量
  トランスミッション
    型式
    変速比 1/2/3
          4/5/R
    最終減速比
  シャシ
    ステアリング
    サスペンション 前
              後
    ブレーキ      前
              後
    タイヤ
  ディメンション&ウェイト
    全長x全幅x全高
    ホイールベース
    トレッド    前/後
    最低地上高
    室内長x幅x高
    車両重量
    乗車定員
  車両価格(当時)
         167.3万円

直列4気筒DOHC/18R-G∪
B8.5x80.0mm
1968cc
B.3
180PS/5600rpm
17.0kgm/4400rpm
ソレックス・ツイン
61リットル

5MT
3.525/2.054/1.396
1.000/0.854/3.755
3.909

RB
ストラット/コイル
4リンク/コイル
ティスク
ディスク
185/70HR13

4410x1640x1300mm
2500mm
1350/1365mm
150mm
1615x1360x1075mm
1055kg
5名

●エピソード
セリカとアメリカ市場
6年と10ケ月にも及ぶロングセラーとなった初代セリカ。輸出の占める台数が圧倒的に多いアメリカ市場を意識しないわけにはいかなかった。アメリカのトヨタのデザイン会社(CALTY/キャルティ)のものをべースにしたラグジュアリ志向の強いものが2代目に採用された。実際、アメリカではよく売れたが、日・米ともに「もっとスポーティーに」という要望は根強く、それがその後のモデルに生かされることになる。

●バリエーション

1977年8月 セリカクーペ1600GTV(TA40型)
 
LBに対しクーペボディにも2000/18R-GUと1600/2T-GEUの2つのスポーツエンジンがラインアップされた。このGTVは、GTに対し装備が若干簡略化されたモデルで1600GT/146万7000円に対し、141万9000円となる。


1979年8月 セリカLB2000GT(RA45型)
 
前年9月にGTの2000cc車のエンジンがインジェクション付きの18R-GEUとなったが、FMCから2年目にあたるこの年、大幅なフェイスリフトが行なわれた。さらに1年後の80年8月にはLB2000GT/1600GTのみリアサスにセミトレが採用された。

1979年8月 セリカクーペ1600GTラリー
 
ラリーシーンでのセリカの活躍から登場したGTラリーの名称は(78年9月に2000GTラリー、11月に1600GTラリー)はマイチェンでもしっかり受け継がれた。実際はGTVの後継車にあたり、ラジオはAM、シート地もビ二一ルとモータースポーツペースにうってつけだった。

●当時のインプレッション
工アロ調のデザインが特徴だが、空力性能は今からすれば大したものではなかった。それでも最高速は実測で180km/h近くまで達したのだから、18R-GU型2000DOHCのパワーは立派。排ガス規制をクリアしつつ130PSを得ていたのだが、2000ccクラスエンジンの中ではもっともパワーダウンを感じさせないもので、DOHCらしい豪快な吹き上がりを楽しめた。一方、サスは全体にソフトで乗用車の雰囲気が強い味付けだった。

●モータースポーツ
トヨタはWRC(世界ラリー選手権)に76年からセリカ2000GTを投入した。
アンダーソン、ミッコラ、ワルデガルト、工クルンドらの名ドライバーは常に上位入賞を果たしたが、記念すべきは82年の第7戦/ニュージーランド。ワルデガルトのセリカ2000GTはついに初優勝、工クルンドのセリカも2位に入賞した。

●広 告
「セリカ・エアロダイナミクス、答えは風の中に…」のコピーでスタートした2代目セリカの広告も、MCでガラリと方向性が変わった。
ラリーシーンやサーキットでの写真を使い、挑発的なコピーが特徴だった。
「名ばかりのGT達は、道を聞ける」「ツインカムを語らずに、真のGTは語れない」等、ライバルメーカーは胃を痛くしたことだろう。
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