日本のスポーツ車 1960〜1990



第76回 トヨタ ソアラ2800GT
(MZ11型)1981年2月

最高速=198.07km/h 0-400m=16.00秒(テスト値)



予想に反して若者に爆発的人気を得た元祖ハイソカー。

 80年の大阪モーターショーに、トヨタは1台のコンセプトカーを展示した。
人目を惹く派手なルックスのコンセプトカーが多い中、EX-8と名づけられたそのクルマは、比較的地味な2ドアノッチバックのポディが与えられ、どちらかといえぱ見過ごされがちな存在だったといえるだろう。
 しかしその内容にまで目を向けてみた人は、当時のトヨタの技術カが、見事なほど現実的に集大成されていることに驚きを覚えたものである。
2800ccの直6DOHCエンジン、前/ストラット、後/セミトレの4輪独立懸架サスベンション、4輪ベンチレーテッドディスクのブレーキなどなど、EX-8は新世代のGTカーのあるべき姿を、実に明解に具体化したコンセプトカーだったのだ。
 そして翌81年の2月。EX-8はほとんどその形、内容を変えることなく、ソアラという車名で発売されることになった。
ちなみにソアラというのは上級グライダーのことで、静かにそして凛々しく青空を駈ける姿を、新たなフラッグシップのイメージにオーバーラップさせたわけである。
また市販されたソアラには、2800ccモデルの他に廉価版の2000ccモデルも用意されたが、そのグレード名にはVT、VU、VRなど航空用語が用いられた。
 2800GT系に搭載されたエンジンは、水冷直6・2800ccの5M-EUをべースにツインカム化を図った5M‐GEU。最高出カは170PS/5600rpm、最大トルクは24.0kgm/4400rpmを発生した。
気筒あたりのバルブ数は2本だったが、生産車では初の油圧ラッシュアジャスターを採用。高性能と同時に、高級車用エンジンに求められる高い静粛性を実現していた。
 動カ性能の目安となる性能データとしては、2800GTエクストラの5速MT仕様で、最高速198.07km/h、0→400m加速16.0秒という記録が実測テストでマークされている。
当時はストックの状態で200km/hを越えるクルマほまだなく(半年後に登場するセリカXX2800GTが国産初の実測200km/hオーバーカーだった)、0→400m加遠にしても16秒台後半がスポーティカーのアベレージだったことを考えれぱいかにソアラが逮かったか想像がつくだろう。
 ソリッド&リンバーサスと呼ぱれる4独サスペンションは、2800GT系と2000VRにハードセッティングを採用。
しかしソアラの性格そのものが、ワインディングを豪快に攻め込むより、長時間に渡る高速クルージングを快適にこなせることを主眼としているため、基本的にはソフトな乗り心地を重視したものとなっていた。
 装備類にしても、ソアラ2800GTには目を見張るものがあった。
メーターには最新式のデジタルメーターが採用され、空調にもタッチパネルで操作するマイコン制御式オートエアコンを標準装備。
他にもクルーズコンピュータや番組予約付AM/FMラジオ、また最上級グレードの2800GTエクストラでは、ブロンズガラス、ダブルラッセル織り高級シート、工ア式ランバーサポートまで備えていた。
 機能的にも装備的にも贅を尽くしただけあって、ソアラの価格は2800GTエクストラのATモデルで299.8万円という超高価な設定となった。
いくらなんでも高すぎるのでは…という意見も間かれたが、実際に発売になってみると、諸経費を入れれば軽く300万円を越えるクルマが飛ぶように売れたのである。言ってみれぱ、ソアラは自動車に対する価値観を大きく変えたクルマといえるだろう。
 81年6月には、2000ccシリーズのラインアップ強化のため、VRにターボモデルを追加。エンジンは2000ccSOHCに1基のターボチャージャーを組み合わせた、M−TEU型を搭載した。
この頃のトヨタは日産や三菱とは対照的に、非常に慎重な姿勢でなかなかターボ採用に踏み切らなかったのだが、ソアラではミッションをATのみに絞るということで、低遠トルクの間題を回避することにしたわけである。



CD値0.36はノッチバック・スタイルのクルマとしては世界のトップレベルと言われた。さらにドア周辺の段差や突起を極力少なくした面一化したポディもこのクルマの特徴だ。 最近では珍しくなってきたデジタルメーターも、当時はハイグレードモデルにのみ設定されていた。 5M−GEU工ンジン。2800cc6気筒DOHCは最高出力170PS、最大トルク24.0kgmだが、当時は日本のGT史上、最強スペック誇っていた。


主要諸元 トヨタ ソアラ2800GT
●エピソード
デジタルメーターの採用

5ヶ月前に発売されたレパードにもデジタルメータが装着されていたが、ソアラのそれは「インパネから針が消えた」と宣伝コピーで豪語するとおり、スピード、タコメーターはもとより、燃料計、水温計のたぐいまで工レタトロニック・ディスプレイ・メーターを採用。さらにマイコン制御のフェザータッチ・オートエアコンなど、先進のエレクトロニクスを盛り込んでいた。
  エンジン 
    種類/型式
    ボアxストローク
    総排気量
    圧縮比
    最高出力
    最大トルク
    燃料供給装置
    燃料タンク容量
  トランスミッション
    型式
    変速比 1/2/3
          4/5/R
    最終減速比
  シャシ
    ステアリング
    サスペンション 前
              後
    ブレーキ      前
              後
    タイヤ
  ディメンション&ウェイト
    全長x全幅x全高
    ホイールベース
    トレッド    前/後
    最低地上高
    室内長x幅x高
    車両重量
    乗車定員
  車両価格(当時)
          291.3万円

直6・DOHC/5M-GEU
83.0x85.0mm
2759cc
8.8
170PS/5600rpm
24.0kgm/4400rpm
電子制御燃料噴射(EFI)
61リットル

5MT
3.285/1.894/1.275
1.000/0.783/3.768
3.727

R&P(パワー)
ストラット/コイル
セミトレ/コイル
Vディスク
Vティスク
195/70R14

4655x1695x1360mm
2660mm
1440/1450mm
165mm
1775x1410x1090mm
1300kg
5名

  (表示はネット値)

●当時のインプレッション
国産初の本格的グランツーリスモとなったソアラの評価を高めたのが、なんといっても2800cc直6DOHCの搭載だった。全域に渡るたっぷりとしたトルクと、当時としては溢れるほどと思わせたパワーは、端正なスタイリングのポディでほぼ200km/hを可能にしていた。BMW6シリーズを参考にしたといわれるシャシは、それよりも穏やかな操縦特性を持っていた。限界は高くなかったが、パワーを生かしたドリフトも可能だった。


●バリエーション
1981年2月 ソアラ2000VR

2800cc6気筒D0HCの2800GTに対して、軽量パワフルと謳われた1G-EU(0HC6気筒)を積むモデルがこの2000である。ポディは同一だから廉価版として人気を博した。


1981年6月 ソアラ2000GTターボ

ソアラのデビュー4ヶ月後に、M型2000ccエンジンにターポを装着したM-TEUを積む2000ターポが登場した。83年にはインタークーラを装着して、当初145PSだった出力も160PSまでアップした。

●カタログ
1600ccのハッチバックスタイルのポーイズレーサーが幅を効かせていた時代に6気筒DOHCエンジンを搭載した大人のスペシャリティカーとして登場したソアフは、メーカーの予想に反して若者の心をつかんだ。
M型6気筒にタ−ポを装着したM-TEU型。OHC2000ccの1G-EUの125PSに比ぺて20PSもアップの145PSを発揮。83年にはインタークーラーを付けさらに馬力アップした。
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