日本のスポーツ車 1960〜1990



第81回 トヨタ セリカ1800GT-T
(SA60型)1982年11月

最高速=190.98km/h  0-400m=15.85秒(テスト値)



ツインカムかターボか?結論はツインカムターボ!。
 73〜78年といえぱ、日本の自動車メーカーは石油ショックと公害対策のダブルパンチによって、およそスポーツエンジンなどとは縁のない分野での技術開発に全力を傾けなけれぱならなかった時期。
その暗黒の時代にあっても、トヨタは燃料供給がキャブからEFIに切り替わるほんの一時期を除けぱ、ずっとツインカムエンジンを作り続けてきた。
それだけ企業としての余力があったということも杏定できないが、技術者の間にツインカムに対する強いこだわりがあったのも事実だろう。
 そんなトヨタにとって、79年デピューのセドリックターポから始まったターボ時代の到来は、ある意味で非常に苦々しい出来事だったに違いない。
いきなり登場したその付加デバイスは、タイムラグなどの間題点をほとんど克服しないまま投入され、それでいながらスベック的には極めて高い絶対性能を発揮するのである。
 もちろんトヨタが即刻ターポに手を出さなかったのは、メカニズムの美学にこだわったというだけではなく、むしろ営業的な慎重さの方が大きかっただろう。
しかしいずれにしても、日産のターボ戦賂に対し、NAのツインカムで敢然と立ち向かうことにしたわけである。
つまり「ツインカムかターボか」という選択に、ユーザーが悩むことになったのだ。
 ところが、いかにツインカムでNAの高フィーリングとパワーの両立を試みても、絶対パワーは過給エンジンにかなうべくもなかった。
しかも世はパワーウォーズの真っ只中。特に2000cc以下のスポーティモデルに関しては、理屈よりもスベックがモノを言う時世だったのだ。
 そこでトヨタは絶対的な優位を手に入れるため、そしてユーザーの悩みを吹き飛ぱすために、ツインカムとターボの両方を備えた工ンジン3T-GTを作り上げセリカシリーズに搭載した。それが82年9月に登場したセリカGT‐Tである。
もちろん基本メカを共用するカリーナとコロナにも、同じエンジンを搭載したモデルが用意されることになった。
 LBではなくクーペが選ばれたのは、3つのボックスセクションを持ったノッチバックの方がボディ剛性や重量の面で有利だったからである。
 3T-GTはその型式名からも分かるように、1600ccツインカムの名機2T-Gがベース。
ストロークを8mm延ぱすことで1770ccまで排気量を拡大し、さらにターボチャージャーの装着で、160PS/6000rpmの最高出力と21.0kgm/480rpmの最大トルクを発生させていた。
 GT-Tの走りは強烈のひと言だった。0→400m加遠は実潮で15.85秒を記録。それまで国産車のベストタイムだったソアラ2800GTの16.00秒を、わずか1800ccのセリカが一気に吏新してしまっだのだ。
また最高遠にしても190.98km/hをマーク。「ツインカムかターポか」論争にも完璧にケリをつけてしまった感があった。
 足まわりについては、他のセリカと固じく前がストラット、後ろがセミトレーリングアームによる4輪独立懸架が採用されたが、スプリングやダンパーは大幅に固められ、コントロール性の高いスポーティな味付けとされていた。
それに3T‐GTはコンパクトな4気筒なのでエンジン重量も軽く、よりパワフルな5M-G搭載のXXと較べても圧倒倒的に運勤性能は高かった。
 またGT-Tの開発には、もうひとつの大きな目標があった。
それは国際ラリーのグループBクラスヘの参戦。しかし3T-GTは車両レギュレーションに対してわずかに排気量が少ない。
そのためボア拡大によって若干の排気量調整を行なった4T-GT〈+21cc)というエンジンも、3T-GTと並行して作られることになった。
 限定生産が行われたセリカGT‐Sは、その4T‐GTエンジンを搭載し、リアサスをトラブル発生時にアッシー交換しやすい4リンクリジッドとした、ラリー用ベース車輔なのである。



標準はアナログだが、デジタルメータはGT-Tにオプション設定されていた。 3T-GTEU工ンジン。1800ccDOHCターボでツインカムか、ターポか?の論争に終止符を打った。


主要諸元 トヨタ セリカ1800GT-T

直線を基調にしたポディデザインは当時の主流であった。つり上ったリアのテールランプにクーぺ版の特徹がある。


●当時のインプレッション
ツインカムターポという当時としては驚くべきスペックを持つGT-Tだったが、そこはトヨタのクルマで、誰でも扱える性格が与えられていた。ただし、今からみれぱ過給が立ち上がるまでのラグばどても大きく、低回転域と高回転でのパワーの落差にはもの凄いものがあったから、そのターポの威力ぱより凄く感じられたものだ。操縦性はノーズヘビーを感じさせる強いアンダーステアを基本としたが、FRの醍醐味は十分に楽しめた。
  エンジン 
    種類/型式
    ボアxストローク
    総排気量
    圧縮比
    最高出力
    最大トルク
    燃料供給装置
    燃料タンク容量
  トランスミッション
    型式
    変速比 1/2/3
          4/5/R
    最終減速比
  シャシ
    ステアリング
    サスペンション 前
              後
    ブレーキ      前
              後
    タイヤ
  ディメンション&ウェイト
    全長x全幅x全高
    ホイールベース
    トレッド    前/後
    最低地上高
    室内長x幅x高
    車両重量
    乗車定員
  車両価格(当時)
          179.0万円

直4・DOHCターボ/3T-GTEU
85.0x78.0mm
1770cc
7.8
160PS/6000rpm
21.0kgm/4800rpm
電子制御燃料噴射(EFI)
61リットル

5MT
3.566/2.056/1.384
1.000/0.850/4.091
4.100

R&P
ストラット/コイル
セミトレ/コイル
Vティスク
ティスク
185/70SR14

4435x1665x1320mm
2500mm
1395/1385mm
170mm
1740x13750x1070mm
1145kg
5名

●バリエーション
カリーナ1800GT-T

ファミリカーとしての性格づけがなされていたカリナにも3T‐GTEUを積むホットパージョンが設定されていた。もちろんシャンはセリカと共通の4独サスゆえに走りの性能はセリカと互角だったのは言うまでもなし。


コロナ1800GT-TR

コロナは1800ccだけで4種類のエンジンをもっていたが、その中でも1800ccDOHCターポを積むモデルは、最もスパルタンな味つけがされていた。このホットエンジンを積むのはセダンとHTの2タイプがあった。HTはGT‐T、セダンはGT-TRとして区別されていた。

●カタログ

ターポモデルが全盛の項、トヨタはターポ車を出すのをためらっていたが、時代の流れに逆えず、遂に究極ともいえるツイン力ム・ターポを出してきた。その第1弾がこのセリカ、そしてコロナ、カリーナの3兄弟であった。

●モータースポーツ

WRC(世界ラリー選手権)への参戦は83年から。その年の第11戦コトジポアールでは早くもワルデガルドが優勝を飾っている。86年までの4年問に残した戦績は先代を上回るもの。84年のサファリ・ラリーでは初出場ながら、ワルデガルドのドライブにより優勝。以来、サファリでは3年連続制覇を成し遂げた。2年目の優勝ドライバーはカンクネン、3年目は再ぴワルデガルドである。サファリといえばセリカのイメージを植え付けた。
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