日本のスポーツ車 1960〜1990



第83回 ホンダ シティ・ターボ
(AA型)1982年9月

最高速=165.90km/h  0-400m=18.26秒(テスト値)



遊びゴコロ満載のカッ飛び1.5BOXカー。
 ホンダが提唱したMM(マンマキシマム・メカミニマム)思想、つまり居住スベースはとことん広く、機械部分は限りなく小さくするというコンセプトは、81年11月に発売されたシティによって、実に分かりやすく具体化された。
1.5ボックスと言われるほどに短いノーズには、走るために必要なエンジンとFFメカニズムを詰め込み、その後ろには1470mmという高い車高を生かした広い居住空間を作り上げたのである。しかもそれらを全長わずか3380mmという軽自動車十αの寸法に収めてしまったホンダの手法は、斬新そのものだった。
 そういった極めて高い合理性の他にも、シティには遊び心という大きな魅力があった。
極端なトールボーイフォルムと丸型へッドランプを組み合わせたスタイルは、オモチャ的な可愛らしさを持っていたため、実用性や経済性の高さを大事にするファミリードライバーだけでなく、クルマを遊び道具のひとつとして考える若いユーザー達に圧倒的な支持を受けたのだ。
そしてそれに伴い、車名通りのシティユースだけでなく、レジャーのための遠乗りの足としての機能も、強く求められるようになりはじめた。
もちろん走りの楽しさも、その機能に含まれたわけだ。
 ところがデピュー当時に設定されていた63PSと67PSのER型1200ccSOHCエンジンは、実用面で不満を感じさせないという必要条件を満たしてはいたものの、走りを楽しむという十分条件まではフォローしきれなかった。
そこでホンダは82年9月、これまた遊び心の延長かと思えるほど、思いきりハイパワー化を図ったターボモデルをデピューさせたのである。
 搭載エンジンはER型がべースで1231ccの排気量も変更されていなかったが高価なチタン添加シリンダーヘッドやPGM-FIと名づけられた電子制御噴射装置を採用。それに小型のターピンで0.75Kg/cuのブーストをかけることによって、最高出力は100PS/5500rpmを発生させた。
 走行性能は、最高速こそギアリングなどの関係で165.90km/hまでしか伸びなかったが、0→400m加速に要する時間はわずか16.26秒。当時の2000ccクラスのスポーティカーをも上回るほどのタイムを叩き出していたことになる。
 ターボは性能が高いだけでなく、内外装にもより一層の遊び心を盛り込んだことでも人気を高めた。
外観ではフォグランプを組み込んだ大型フロントバンパーが採用されたのに加えて、ボンネット上にはエアチャンバー分の出っ張りをカバーするパワーバルジも装着。
内装にしても、黒と原色を組み合わせた大胆なカラーリングのバケットシートや、アナログタコメーターの中央にデジタルスピードメーターを組み込んだインパネなど、楽しさに溢れた設計が行われた。
 83年11月になると、ターボをさらに発展させたスポーティバージョンとしてターポUがラインアップに追加される。
ターボとの最も大きな違いは、ブルドッグという愛称が示すように、ノンターボのシティとは大幅に異なった追力ある外観が与えられたことだろう。
ダイナミックフェンダーと呼ぱれる大型のブリスターフェンダーが採用され、トレッドも前で30mm、後ろで20mm拡大。
またパワーバルジはポンネットと一体成形となった大型のものに変更され、リアフェンダーにはダクトも設けられた。
 エンジンはERターボのまま基本部分の変更はないが、インタークーラーが追加されたことによって最高出力は110PS/5500rpmにアップ。
最大トルクも1.3kgm向上して16.3kgm/3000rpmになった。
 しかしこのターボUは性能追及や過激指向が少々エスカレートしすぎたためか、初代ターボほどの爆発的なヒットには結びつかなかった。
しかしこの頃になると、鈴鹿でブルドッグレースというターボUのワンメイクレースが開催されていた。つまり公道上でのオモチャ感覚からは遠のいてしまったが、レース入門車としてサーキットに場所を移して活躍を続けたわけである。


ターポモデルはノンターポと比ぺて明らかにスポーツ志向に振っていた。シートはコンパクトなパケットタイプだった。 タコメーターはアナログに見える回転式。スピードは大きくて見やすいデジタル式を採用している。ステアリングもスポティな3スポークタイプだ。


ノンターボのシティはあくまでシティコミューターとして位置づけられていたが、このターポモテルからシティはカッ飛びライトウエイトスポーツに変身した。


1231ccのER型工ンジン。PGM-FIという電子制御燃料噴射と超小型ターポを組み合わせ、100PSの出力を発揮。0→400m16.26秒という駿足を誇っていた。


主要諸元 ホンダ シティ・ターボ
  エンジン 
    種類/型式
    ボアxストローク
    総排気量
    圧縮比
    最高出力
    最大トルク
    燃料供給装置
    燃料タンク容量
  トランスミッション
    型式
    変速比 1/2/3
          4/5/R
    最終減速比
  シャシ
    ステアリング
    サスペンション 前
              後
    ブレーキ      前
              後
    タイヤ
  ディメンション&ウェイト
    全長x全幅x全高
    ホイールベース
    トレッド    前/後
    最低地上高
    室内長x幅x高
    車両重量
    乗車定員
  車両価格(当時)
          109.0万円

直4・SOHCターボ/ER
66.0x90.0mm
1231cc
7.5
100PS/5500rpm
15.0kgm/3900rpm
PGM-FI
41リットル

5MT
2.916/1.764/1.181
0.846/0.655/2.916
4.066

R&P
ストラット/コイル
ストラット/コイル
Vティスク
LTドラム
165/70HR12

3380x1570x1460mm
2220mm
1370/1370mm
145mm
1615x1310x1175mm
690kg
5名


●バリエーション
1983年11月 シティ・ターボU
 
従来のターボ・パージョンを、さらにパワーアップしたエンジンをひっさげて登場したのがこのクルマ。愛称はブルドックと言jhれたが、それは前後のプリスターフェンダーや愛らしいグリルの顔だちから来たものだ。

●カタログ

シティの工ンジンはCOMBAX(コンパックス)と呼ぱれ、「高密度速炎燃焼原理」をもとに高圧縮、高出力、低燃費を謳っていた。エンジン出力は、61、63、67、110PSと4タイプが用意されており、110PSはブルドッグ(ターポU)に搭載されていた。

●当時のインプレッション
SOHCながら、ICターボでチューンされたターボUは、ゼロヨン15秒台で走り切るいう、1200ccとしてはとてつもない加速性能を発揮した。ただ全開発進時は強烈ななトルクステアに対抗してトラック的に立ち上がった八ンドルを力一杯押さえ込んでいないと方向が定まらないうえ、2220mmというショートイールベースが災いして直進安定性が低く、高速では横風の影響をモロに受けた。かなり乱暴な車だが、ジャジャ馬馴らしのつもりで乗れば楽しめた。

●モータースポーツ

鈴鹿サーキットて行なわれるF2レースの前座レースとして、ブルドッグだけのワンメイクスレースか行なわれた。ショートホイールベースにトールボーイといわれた車高の高いボディゆえにコーナーで派手な転倒が見られるなど、工キサイティングなシーンが多かった。出場選手の中には、黒沢、津々見など住年の名ドライパーのほかに若い松田秀士選手の姿も見られた。
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