日本のスポーツ車 1960〜1990



第89回 トヨタ カローラ・レビン1600GT APEX
(AE86型)1983年5月

最高速=186.87km/h  0-400m=16.14秒(テスト値)



走り屋レビンはやっぱりFRが最適。
 日本ののモータリゼーションをリードしてきたカローラは、生産累計台数を次々と記録し、名実ともに世界のカローラとして親しまれてきた。
そのカローラも83年5月のフルモデルチェンジをきっかけにして、時流がそうであったかのように、セダン系は居住性/経済性に優れた前輪駆動方式を採用している。
 その一方で後輪駆動方式を採用するスポーツクーペの存在もまたあった。
クーべ系は、27(二ーナナ)系から親しまれてきたネーミングを用いて、カローラ系にレピン、スプリンター系にトレノの冠を有したスポーツタイプとして残されたのだ。
後にハチロクなどというニックネームまで付けられていたが、1600ccエンジンを措載するモデルの型武がAE86となっていたことからハチロクと、カローラ/スプリンター全体を総称して呼ばれるようになった。
 基本的にレビン/トレノともに同じコンポーネンツを採用し、3ドアハッチバッククーペと2ドアノッチバッククーペの2つのボディから構成されていた。
市場では圧倒的に3ドアハッチバッククーペが多く出回っていたが、一部競技(ラリー等)目的で2ドアの需要も多かった。
 この両車を見分けるには、フロントを構成するグリルのデザインの違いだけであった。
カローラレビンの一部(初期型GTアベックス)には、エアロダイナミック・グリルが採用され、熟感知によって自重的にグリルが開閉する仕組みとなっており、空カ特性と冬期暖房性能の向上が大きな目的だった。
 また、スプリンタートレノには、よりスポーティさを増すために全車がリトラクタブルへッドランプを設定していたことがその違いとなっていた。
 両車の基本的なポディラインは、滑らかな曲線を基調に、ポディ前後を絞り込んだ流麗なデザインであった。
特にその頃盛んに使われはじめたドアミラーを設定することで、空力特性的にも優れたCd値0.35(3ドア車)を実現している。
 レビン/トレノのGT系に搭載されていたエンジンは1600ccのDOHC4A−GEU型の130PS/6600rpm、15.2kgm/5200rpmであった。
 4A−G型は、トヨタを代表するスポーツエンジンだった2T−G型の後継機として新開発されたDOHC4気筒16バルブエンジンで、1気筒あたり4バルブとするダイレクト駆動を採用していた。
DOHCのメリットを生かすために、圧力センサーで走行状況に適した燃料を算出する新方式のEFI-Dを採用し、吸入抵抗になるエアフローメーターが取り払われた。
 また、抵中速域と高速域をバランス良く制御するための装概として、吸入ポートにT-VIS(トヨタ・パリアブル・インダクション・システム)を採用して全域を効率良くカバーしていた。
 この高性能な4A−Gエンジンは、レースの入門用としてワンメイクレースやジムカーナ、ラリー等に広く普及していったのだ。
 シャシコンポーネンツは、当然ながらFFとは別設計となり、シンプルな構造で構成されている。
まず、サスペンションは、フロントに典型的なマクファーソン式ストラットサスベンション、リアはラテラルロッド付4リンク/コイルのリジッドアクスル方式が採用されていた。
 まだ今のように峠族などその存在すらなかった頃に、すでにサスチューニングとしてダンパーやスプリング交換などのパーツの他にプッシュ類をピロボールにするなど、レーシングカー顔負けのスポーティなチユーニングも行われていた。
もちろん、この背景にはモータースポーツとして盛んであったフレッシュマンやワンメイクレースにトヨタが開発してきたレース用パーツが豊富に揃っていたことも大きく貢献していたようだ。



GT‐APEXにはデジタルメーターが標準装備であった。
背もたれのサイドサポートにはアジャスター機能があリ、身体に合った微調整ができる。パッドはやや硬めのスポーツシートを採用した。
4A‐GEU工ンジン。トヨタのミドル級の代表的エンジン。有名な1600cc2T‐GEUの後継型。最高出力130PS/6600rpm。レピンやトレノのGT系に搭載された。
カローラ系がFF北されたにもかかわらず、レピン/トレノのスポーツモデルはFRとして生き残った。

●兄弟車
スプリンター・トレノ1600GTV

レビンがごく普通のグリル付きフロントマスクを持つのに対して、トレノはりトラクタブルヘッドで、ややおシャレな雰囲気。ただし、シャシ、エンジン、室内等はレビン/トレノもまったく同じ仕様だ。


主要諸元 トヨタ カローラレビン1600GT APEX
 エンジン 
    種類/型式
    ボアxストローク
    総排気量
    圧縮比
    最高出力
    最大トルク
    燃料供給装置
    燃料タンク容量
 トランスミッション
    型式
    変速比 1/2/3
          4/5/R
    最終減速比
 シャシ
    ステアリング
    サスペンション 前
              後
    ブレーキ      前
              後
    タイヤ
 ディメンション&ウェイト
    全長x全幅x全高
    ホイールベース
    トレッド   前/後
    最低地上高
    室内長x幅x高
    車両重量
    乗車定員
 車両価格(当時)
         154.8万円

直4・DOHC/4A-GEU
81.0x77.0mm
1587cc
9.4
130PS/6800rpm
15.2kgm/5200rpm
EFI
50リットル

5MT
3.587/2.022/1.384
1.000/0.861/3.484
4.100

R&P(パワー)
ストラット/コイル
4リンク/コイル
Vディスク
ティスク
185/60R14 82H

4180x1625x1335mm
2400mm
1355/1345mm
155mm
1765x1355x1090mm
940kg
5名


●広 告

1600ccD0HCといえば2T-GEUが今までの代表機種だったが、新時代の幕明けを告げるように4A-GEUというニューエンジンかトレノ/レヒンに搭載された。
●エピソード
FF化傾向の中で最後のFRスポーツ
大衆車クラスが次々にFF化を図る中、80系カローラもFFレイアウトで発売された。が、レビン/トレノは従来通りFRを踏襲。唯一のライトウエイトFRとして爆発的な人気を呼んだのはいうまでもない。しかし、次のAE92ではFF化され、AE86は手頃な植段で買えた最後のFRとなってしまう。ちなみに以後10年以上もフレッシュマンレースでは人気のカテゴリーで、FlSCOではAE86レースだけで150台近くのエントりーがあった。
●当時のインプレッション
他車がFF化されていく中で、最後までFRで頑張ったのが86だった。さらに新開発の4A-GE型1600ccツインカムはまさにモーターのように軽く吹き上がり、抜群のレスポンスをみせた。トルク感に欠けるのが弱点だったが、そこは回転でカパーするというものだった。LSDさえ与えれば自在に姿勢を操れるFRならではの操縦性が何より最高の魅力だ。基本的にはアンダーを強めてあるが、そこはウデ次第でどうにでもできた。
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